主要諸元 |
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全長×全幅×全高(o):2195×825×1215 ホイールベース(o):1460 最低地上高(o):320 シート高(o):895 車両重量/乾燥重量(s):127/114 乗車定員(人):2 燃料消費率(q/L)60q/h定地走行テスト値:36.0 最小回転半径(m):2.3 エンジン形式:水冷・2サイクル・単気筒・クランクケースリードバルブ 総排気量(p3):249 内径×行程(o):66.4×72.0 圧縮比:6.7 最高出力(PS/rpm):40/8000 最大トルク(kgm/rpm):4.0/6500 キャブレター形式:PE1A 始動方式:キック式 点火装置形式:CDI式マグネット点火 潤滑方式:分離潤滑方式 潤滑油容量(L):1.2 燃料タンク容量(L):11 クラッチ形式:湿式多板コイル・スプリング 変速機形式:常時噛合式6段リターン 変速比・1速:2.538 2速:1.764 3速:1.400 4速:1.090 5速:0.909 6速:0.807 減速比(1次/2次):2.600/3.000 キャスター(度)/トレール(o):27°35′/113 タイヤサイズ前/後:3.00-21 51P/4.60-18 63P ブレーキ形式前/後:油圧ディスク/油圧ディスク 懸架方式前/後:テレスコピック式(倒立)/スイング・アーム式(プロリンク) フレーム形式:ダブルクレードル |
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私が最初に買った車両法上の自動車であるバイク、すなわち126t以上のマシンが、このCRM250ARだった。 そして今、(私にとって)3代目のARが手元にある。 間違いなく、しつこく乗り倒すのにふさわしい、素晴らしいマシンである。 CRMの前には50tから始まって数台の(車両法上の)原付を乗り継いでいた。一番最初の2輪車は、ホンダ・ジャズだったし、その後のホンダ・ジョーカー90など、バイク選びのプライオリティは形重視、それもアメリカンかせいぜいネオクラシックなどの、どちらかというとストリート系寄りだった。 ジョーカーの項でも述べるが、50tの法的な限界に懲りた私は、いったんはバイクを降りた。でも、どうしてもアシが必要だったから、小型限定免許を取り、その上でおっさん臭さのない二種原付スクーターということでジョーカー90を乗るようになった。その時点で、十分に二輪生活は満足であったが、大学卒業後、友人らが二輪免許をわらわらと取り始め、ツーリングに行こう、という話になる。当初は無理にジョーカーで突っ込もうかとも考えたが、さすがに行き先が長野となるや、行程的には無理がある。 ということで、ツーリングのために取ったような二輪免許であったから、マシンもツーリングのためにとりあえず用意する、といった感覚が強かったように思う。最初のバイク選びにしては、えらい軽いノリだった。スズキ・SW-1あたりはちょっと本気でほしかったけれど、キムタクのせいで迷惑にも価格が高騰していたし、スズキ・デスペラードχなんかも興味あったけれど、車検があるし…。そんな中で、ヤフオクで見つけたのが、(私にとって)初代CRM250ARだった。 全然違う?確かに。いや、ぶっちゃけオフ車というスタイルには抵抗があった。それまでオフを走ったことなければ、徹底的に機能美に研ぎ澄まされたあの形の良さなど、わかるべくもない。ただ、ジョーカーで2stに馴染み、またスノーモービルで2st400tの強烈さを体感し、あぁ、2stっておもしろいかもって思い始めた折に、そろそろ2stが生産中止になるらしいって聞いたものだから、エンジンありきでまず興味を持ったんだ。それだけなら、ほかにレーサーレプリカとはいわずとも、ヤマハ・R1-Zなんかでもよかったのかもしれないが、CRMはなんといってもAR燃焼である。その意味、理屈はさっぱりわからなかった(今でも?)けれど、とにかく4st並に燃費がいい革新的な2stエンジンってのが、おもしろそうだなって思ったんだ。 素直じゃない動機から手に入れたCRMは、ツーリングから帰ってきてすぐに手放した。 強烈な加速はいいけれど、どうも自分がオフ車に乗っているというのがしっくりこなかったんだ。オフを走ることもなかったし。それに、ツーリングでつれに貸してもらったカワサキ・ZZ-R250の、1万rpmを超えてからの豹変ぶりに、四輪を含め初めて回転させてパワーを得る快感を知って、とりあえず250tマルチに乗りたいと思ったんだ。まだこのころにはCRMのすごさはさっぱり理解していなかった。その燃費にしたって、1台目なら他との比べようもない。ただ、バイク選びの優先順位の中で、動力性能を一気に押し上げた立役者だったのは間違いあるまい。 しばらくはロードマシンが続いた私の車歴だが、再び例の仲間とのツーリングにて、転機が訪れる。急遽マシンが入院してしまい、代替として安くヤマハ・TDR250を手にしたのだ。この時も、あぁ2stやっぱりいいよなぁってのはあったが、あとは安かったのと納期が間に合ったというだけで、特にマシンにこだわりはなかったんだけれど、初代CRMと違って少なくともオフ車の形に対する免疫はできていた。その上で、実際にオフを走ってみたんだ。これが、楽しくってねぇ…。その後は、周りも抱き込みながらオフ車ばかりになっていく。 TDRの後は、足付きの良さなども考えヤマハ・ランツァに乗ってみたが、個体が調子悪く、再び帰ってきたのが2代目のCRM。そして、さらにもっときれいな物件を見つけ、CRMからCRMへと乗り換えたのが、現在の3代目。 それ以外のマシンがあることもあったが、2006年から基本メインはCRMで引っ張っている。 とにかくすごいマシンである。 オフ車ゆえに、もちろんとびっきり軽量に仕立ててある。乾燥で114s。時に、これですら重いと感じることも、あるっちゃあるけど。軽いだけ軽いほうがいいんだが、少なくとも車両法上のバイクとしては格別に軽い。 バイクって、体と一体になって車体を傾けながらコーナーを回っていく乗り物である。だから、アメリカ大陸のようにデレッと直線を駆け抜けるのでなければ、何より大事なのは軽さである。もちろん、パワースペックも速く走る一つの重要な要素ではあるけれど、馬力もトルクも、効いてくるのは前へ、だけである。軽さは旋回速度そのものにも関わるし、かつ旋回体制に入るための車体を傾ける慣性にまで関わってくる。その点、四輪よりもはるかにウェイト管理に厳重でなければならぬはずだ。 だが、見た目に派手なパワースペックと、下らぬ見栄をバックグラウンドとしたステイタス性が働いているのか、まずは大排気量で馬力ありきのスタンスが、メーカーも雑誌などメディアも、そしてユーザーにさえはびこっているのは、困ったものである。 オフ車の場合はさらに、ギャップを乗り越えたり、飛んだり跳ねたり、あらゆる方向性に慣性が関わるから、公道で走るには十分な動力性能を発揮する250tという枠組みの下、ぎりぎりの攻防を経て辛うじて軽さを保持してきた経緯がある。 公道を走るには、法律を杓子定規に当てはめるのなら、250t4stシングルで十分だ。日本で乗るなら、実は4st250tのトレールこそが、最適解なのかもしれない。しかし、その軽さを維持しながら、暴力的な加速をやってのけるドーピングが、2stである。爆発機会は2倍、単純計算でも倍の力を引き出せる。回転でごまかせる馬力ではなく、単純に力を示すトルクでは、確かにCRMは、250t4stのおよそ倍の4.0kgmという数値を誇っている。それで、114sである! ARはさらに、通常特定の回転数でなければスカスカとなりがちな2stのトルク特性を見事に覆し、まるでディーゼルサイクルのようなもちっとしたトルク感(実際、AR燃焼とは自己着火を促しているのである意味正しいのかもしれない)のまま、バビューンと2stらしく上まで吹けてしまう。 もちろん、リッターSSなどは、200s程度のウェイトの中でトルクは10kgmなどとたたき出し、パワースペックに至っては200psにも迫る勢いであるが。パワーウェイトレシオ、トルクウェイトレシオ、それから実際の加速、いわずもがな最高速などは、わがCRM250ARなどは、屁みたいなもんだろう。 だけど、その200sというウェイト、確かに相対的には最近のマシンはよく頑張ってダイエットしているけれども、絶対的に重いでしょ?サーキットや高速道路をオービスに引っかかるような速度域で飛ばすんならともかく、日本中に張り巡らされた、こまごまとしたコーナーが連続する普通の道を走るのに、私は114sですら時々重いと感じるんだけどね。 一方で、4stシングルは建前としては日本の公道では最適解かもしれないけれど、現実“ぬふわ”km/hでも追い越し車線では煽られる日本の交通環境では、本音としては長距離はしんどい。 その点、CRMほどの動力性能があれば、オフ車という形状、ライディングポジションでは、とにかく風がすごいけれども、少なくとも高速道路で怖い思いをすることはない。 そして、燃費。AR燃焼域は、特に6速では非常に限定的で、高速道路を流れに合わせてとぶと、普通の2st並で、20km/Lを切って、速度によっては15q/Lくらいまで悪化するけど。AR燃焼域を多用する市街地では、20q/Lには乗る。良ければ後半である。80q/hでじわっと走り続ければ、30q/L走る。高速道路はともかく、普通に走っている限りでは、特に神経を使わなくても、4st250tで、スポーティに振ったユニットよりもほとんどの場合燃費がいい。 ついでに、オイル消費もびっくりするくらい少ない。1000q走っても、オイル警告灯がつかない(1Lも消費していないはず)。給油するだけで工賃いらず、GR2を入れたとしてもせいぜい1500円/L、下手したら高頻度に交換する4stよりも低コストかもしれない。 いろんな意味で、最強のマシンだと思うけどね。最適解。 惜しむらくは、ホンダが本来2st屋でなかったことだ。これだけの素晴らしい可能性を秘めた技術も、搭載された市販マシンは日本国内ではCRM250ARのみ。海外モデルに目を向けても、たぶんヨーロッパのパンテオン125/150しかないんじゃなかろうか。 そして、騒音・排ガス規制の強化とともに、あっさりホンダはAR技術を含めた2stを見捨ててしまった。 だから、私はCRM250ARを乗り続けるしかない。乗れば乗るだけ距離の増えるジレンマ。それがこのマシン最大の欠点か。 2014年に入り、生産中止から20年もたっていないというのに、いよいよ重要部品の欠品が多数出始めたようだ。ゴムパーツが壊滅的らしい。そんなころ、ちょうどエンジンに不調を感じた。そしてついに、2014年6月、私はCRM250ARを降りる決心をした。ま、高速道路が楽なオフ車なのは間違いないが、オフ車としては、特にガレ好みの私としては、性能を持て余していたことではあるしな。 |