国道ピックとのりもの

ホンダ・ジョーカー90


主要諸元

全長×全幅×全高(o):1885×935×1060

ホイールベース(o):1200

最低地上高(o):110

シート高(o):695

車両重量/乾燥重量(s):94/89

乗車定員(人):2

燃料消費率(q/L)60q/h定地走行テスト値:39.0

最小回転半径(m):2.1

エンジン形式:空冷・2サイクル・単気筒

総排気量(p3):89

内径×行程(o):48.0×49.6

圧縮比:6.2

最高出力(PS/rpm):8.2/6500

最大トルク(kgm/rpm):0.96/6000

キャブレター形式:PB11

始動方式:セルフ式(キック式併設)

点火装置形式:CDI式マグネット点火

潤滑方式:分離潤滑方式

潤滑油容量(L):1.4

燃料タンク容量(L):5.8

クラッチ形式:乾式多板シュー式

変速機形式:無段変速式

キャスター(度)/トレール(o):28°00′/81

タイヤサイズ前/後:100/90-10 56J/100/90-10 56J

ブレーキ形式前/後:油圧ディスク/機械式リーディング・トレーリング

懸架方式前/後:ボトムリンク式/ユニットスイング式

フレーム形式:アンダーボーン



 このホンダ・ジョーカー90は、道交法上の最初の自動車となるバイクである。
 そして、現ジョーカーは通算4代目となる。

 私の最初の二輪車は、ホンダ・ジャズ。カブ系エンジンを積んだ、かわいらしいアメリカンだった。ジャズは私の二輪生活の原点だし、そのものに加えてツーリングなどのバイク生活全般が楽しかったから、だから今もバイクに乗っている。
 けれど、原付は道路交通法上「自動車」じゃないからねー。30q/h制限も、かえって危ないとはいえ、確かにろくに技能検定もなく免許が取れる乗り物で贅沢言っちゃいかん。二段階右折もしかり。仕方ないけど、でも、原付を乗る立場で言うと、不便を超えて危険である。ということで、いったんバイクを降りたんだ。
 しかし、どうしても通学にバイクがほしい。アシが必要だ。だから、アシとして必要最小限の免許と必要最小限のマシンということで、小型限定の二輪免許を取得し、ギアチェンジなどできなくとも荷物が積める二種原付スクーターを探し始めた。

 単にアシというなら、ベストセラーのスズキ・アドレスV100なんかでも十分だったんだろうが、形だけは、元ジャズ乗りの意地というか、シャレたマシンがよくて。しかし、二種原付スクーターは、(一種)原付スクーターにはたくさんあるヤマハ・ビーノやホンダ・ジョルノ、スズキ・ヴェルデなどのかわいい系スクーターは不毛(現在でも)。ちょうどころデビューしたのが、ジョーカー90だった。

 実は、ジャズに乗っていたころは、友人も皆4ミニ乗りで、2stのスクーターって、どこかバカにしていたんだけどな。でもね。いや、メットインは超絶便利よ。ギアチェンジがないってのも、確かにマシンを操っているって感覚には希薄になるけれども、でも、逆に操作がないがゆえに重心移動に専念できる感じもあって、それはそれで楽しい。
 そして2stについては、当時はスクーターはまだまだ2stが当たり前だったからね。もし、もうちょっと早くヤマハ・ビーノ125なんかが出てくれば、そっちに流れたかもしれないけれど。そして2st嫌いのまま来たかもしれないけれど。結果論、たまたまそれしかなかったがゆえに乗った2stのジョーカーのおかげ(せい?)でいつの間にやら2stにどっぷりはまったんだ。

 (ギア付きの、ふつうの)バイク(以下、単にバイク)に乗る人間はよく「スクーターはバイクじゃない」なんて言うけれども。そいつは了見が狭いと思うな。先にも述べたけれども、ギア操作をしないがゆえの、重心移動に集中する感覚は、バイクとは違った意味での楽しさがある。また、逆にギアチェンジがないがゆえに、そして椅子に腰かける感じのライポジゆえに、魔法の絨毯にでも座って地面を滑っている感覚、これはバイクとは違った快感でもある。もちろん、バンク角はどうしても浅目だし、オフにでも突っ込もうものなら、繊細なクラッチ操作がないと話にならないけれども、だからといって一様にスクーターはつまらぬものだと切り捨てるのは、もったいないよ、別の楽しさがあるんだから。

 実際、私はその後、オフ車がメーンとなる一方で、(アシとしての要請もあるけれども)スクーターは常に手放せない状態が続いている。

 その中でもジョーカーは、特別な存在だ。
 バイクの方では、こちらも当初は形最優先だったけれども、今や機能最優先で選んでいるが、スクーターは違う。たぶん機能最優先なら、ホンダ・キャビーナ90あたりに落ち着いているのだろうが(実際一時所有していた)、ジョーカーの形状はほかの欠点をすべて補って余りある魅力を感じる。そのカタチのため、メットインはキャップがやっと入る程度だし、ワイドなハンドルですり抜けも困難だし、スクーターとしての利便性はだいぶ犠牲になっているだろう。でも、その広いハンドルにてれっと両手を預け、低いシートから前方にでーんと足を投げ出し、無段変速のスムーズな加速に身を委ね、街を流す心地よさといったら、ない。豊かな時間を演出する、流れていく幻想的な夜景のためにもメッキパーツの数々は必須である。

 動力性能は必要最小限。ペースの速い幹線道路や連続した上り坂では時々怖いこともあるが、そんなにガツガツ走るマシンじゃない。燃費も今時の4stから比べたら非常に悪いけれど、でも20q/Lを切ることはない。
 スクーターの標準からすれば、積載性は乏しいが、バイクの標準からすれば十分である。高速道路は走れないけれど、でもこいつで高知や鳥取など幾度も遠出をしている。そのゆったり旅感がまた、贅沢だったりする。

 そして何より、初めての自動車としてのバイクは、行動範囲が無限に広がったような気がした、あのわくわく感は、今でもジョーカーにちりばめられている。

 もし、(四輪も含め)一切の乗り物は1台だけ、と言われたら、ジョーカーを選ぶ気がするな。4台乗り継ぐ、しかもほとんどずっと所有し続けてきただけのことはある。