主要諸元 |
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全長×全幅×全高(o):2010×820×1080 ホイールベース(o):1320 最低地上高(o):310 シート高(o):770 車両重量/乾燥重量(s):95/89 乗車定員(人):1 燃料消費率(q/L)50q/h定地走行テスト値:52.3 最小回転半径(m):1.5 エンジン形式:水冷・2サイクル・単気筒・ピストンリードバルブ 総排気量(p3):216 内径×行程(o):69.0×58.0 圧縮比:6.8 最高出力(PS/rpm):13/5500 最大トルク(kgm/rpm):2.0/3500 キャブレター形式:PE63 始動方式:キック式 点火装置形式:CDI式マグネット点火 潤滑方式:分離潤滑方式 潤滑油容量(L):0.6 燃料タンク容量(L):6.0 クラッチ形式:湿式多板コイル・スプリング 変速機形式:常時噛合式6段リターン 変速比・1速:3.090 2速:2.461 3速:1.888 4速:1.421 5速:1.000 6速:0.703 減速比(1次/2次):3.750/2.384 キャスター(度)/トレール(o):22°30′/54 タイヤサイズ前/後:2.75-21 4PR/4.00-18 4PR ブレーキ形式前/後:油圧ディスク/機械式リーディング・トレーリング 懸架方式前/後:テレスコピック式/スイング・アーム式 フレーム形式:ダイヤモンド |
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こいつはまた、カミソリのようなマシンである。ホンダ・TLM220R。 バイク界では、レプリカという言葉があって、一定の熱狂的な支持層があるが。 一般にレプリカは、レーサーレプリカ、すなわち単なる「複製品」といった意味以上にロードレーサーのレプリカ限定で使われることが多い。確かにあっちは、それはそれでカミソリのような鋭敏さを感じるけれども。 このTLMは、こいつもバリバリに鋭利なカミソリ級の、トライアル・レプリカだよ。あまりに徹底的な造りは、下手したらレーレプ以上だな。小さくて薄いシート、これに座ると膝がえらい角度で曲がってしまうほどに最低地上高を確保したフレームワーク、ケツカッチン食らうと骨折しそうなほどの反動が来るキックペダル、始動性の悪さ、……とても日常使えるバイクじゃない。 でも、その居住性を犠牲にした細い車体は、ガレで抱え込むのにはもってこい、最低地上高は十分だから腹を打つこともない、粘り強いエンジンによって、もうやばいってタイミングでホレっとアクセル捻るとベロッと踏ん張ってくれる。 腕さえあれば、どこへでも行けるよ、腕さえあれば。残念ながら、全然マシンについていけないんだけどね。 ただし、トラ車ゆえにオフ車標準からは大分外れているのは忘れちゃいけない。サスは固めで、しかも軽量で重量が中心に固められているゆえ、普通の荒れたダートをちょっとペース上げようとすると、フロントがヒョイッて思わぬ方向に飛んでしまう。ギャップをけっこうダイレクトに拾う。トラ車は、入力が的確に伝わる方がいいのかもしれない。その結果、フロントの軽さも手伝って、うっかりすると入力が即ヨーモーメントに転換してしまう。こいつが結構やっかいで、慣れるまではぽーんとフロントを飛ばされて転けるってことが多かった。こいつは、ギャップに乗った際、うまくピッチに変換してやらないとダメなんだ。世間ではなかなかバイク乗っててヨーモーメントって話は出てこないから、体で感じるまでにずいぶん時間を費やしてしまった。220tの2stのくせに、たったの13ps…との引き換えに、低速トルクの塊のようなエンジンは、うかつにアクセルを開けると、体を置いて行ってしまう。シート高が低いからって、ヤマハ・セローの売り文句じゃないが「二足二輪」を信じたら、痛い目に遭うだろう。あくまでも、スタンディングでマシンをコントロールしなければならないのだ。 よく、こいつについては乗って初めて、今まで自分がバイクに乗っているんじゃなくて乗せられているんだと気付いたって話を目にするが、その通りだね。ただただ、悪路を走るために徹底的に機能をそぎ落とした刃物。それがゆえに、乗り手を選ぶシビアなマシンだ。 ガスタンク容量は6Lしかないけれど、実は燃費がすこぶるよろしくて、30q/Lくらい走っちゃう。法的に高速道路を走れるのはもちろんだが、最高速的にも80q/hくらいは余裕で出るので、まぁおとなしく走る分には問題ない。ただし、エンジンをぶん回すと燃費が悪化して、航続100qもたないのは要注意だ。ポジションはとにかく窮屈だけれども、逆に体重を足でも支えるからか、薄いシートはともかく案外腰は痛くならない。案外遠出も可能っちゃ可能なのかもしれない。 すごい可能性を秘めたマシンなんだろうけど、ちょっと私人間の方が追い付いていない感じだね。 |